娘の嫁入り前に撮った写真館での一枚

初子と写真館!娘の嫁入り前に撮った一枚は涙しか出なかった

社会人2年目のときに大学のときから付き合っていた妻と入籍した。その1年後には第一子となる娘が誕生し順風満々だった。初めての子供と妻と私。写真館へ出向き3人で写真を撮った。最初は私が娘を抱いて撮ろうとしたが、首のすわっていない娘をどう抱いて良いのか分からなかった。そして私の不安が移ったのか眠りから覚めた娘が泣いて断念した記憶がある。

結局、妻が娘を抱いて椅子に座り、私が妻の後ろに立って撮ってもらった。妻と娘が一緒に写っている写真はこの一枚しかない。娘が産まれて半年後。大好きだった妻が交通事故で他界した。順風満帆だった生活は一転した。悲しむ暇さえなかった。

慣れない家事と育児に追われ、瞬く間に月日が流れたような気がする。妻がいたらと何度も考えた。再婚も考えたが私には妻が全てだった。娘をしっかりと育てること。それだけが生きがいになった。娘が中学生になると反抗期が訪れ、何度も喧嘩をした。

そんなときはまた妻の存在を思い出した。男はこういうところがダメなんだと思う。もしかしたら私だけかもしれないが…。

そして今日、私と妻が愛した娘が嫁いでいった。妻と娘が一緒に写っているたった一枚の写真。これは結婚が決まったときに娘に譲った。私は今でも妻の顔をしっかりと覚えている。思い出だけで十分だった。そして結婚式の前日。娘と新郎に誘われて出かけたのは、あのとき私と妻が訪れた写真館だった。

私はどこの写真館で撮ったかは教えていない。娘と新郎が写真を片手に写真館を探し回ったらしい。娘が「刑事ドラマみたいで楽しかった」と笑ってくれた。私に聞いてくれれば良かったのにとも思うが、その気持ちが嬉しかった。

娘と新郎に連れられて写真館に入ると当時のことを鮮明に思い出した。恐々としながら娘を抱っこして泣かしてしまい、写真館の店主に笑われたこと。妻が笑いながら娘をあやしたこと。恥ずかしくて、情けなくて、苦笑いしてしまったこと。全てを思い出した。

お年を召した店主が近付いてきて、手渡されたのは古ぼけた一枚の写真。失敗した写真とのことだが、それを見て涙が止まらなかった。幼い娘を泣かせて困惑している私と、そんな私を見て笑っている妻。色あせている写真はまるで昨日のことのように思わせてくれた。ただ大きくなった娘の前で号泣してしまい、恥ずかしさで死んでしまいたかった。

その後、新郎の勧めで何故か娘をお姫様抱っこして写真を撮ってもらうことになった。私も娘も真っ赤になりながら撮ってもらった。このときも店主は笑っていた。写真を撮り終わった後で大きくなった娘を見て、再び涙がこぼれてしまった。妻がいたら笑われたかなと考えてしまった。

娘をおろして普通に写真を撮ってもらい、新郎と三人並んで撮ってもらった。娘と新郎の二人も写真を撮ってもらった。初孫が産まれたときには撮りに来ると約束して写真館を後にした。二次会にも誘われたがそこで娘たちと別れた。二次会は若者同士で楽しめば良い。私は妻と二人で酒を飲みたい気分だった。

きっと初孫が産まれたときに私はもう一度泣くのだろう。写真館の店主が笑い、そしてまた思い出が増える。出来上がった写真を取りにいくときは、「お手柔らかに」という願いも込めて、店主に酒の一つでも差し入れようと思う。